投げ技、打撃、関节を决める万能型だという。
贵嶋サリア(たかしま さりあ)などという格闘家は闻いたことがなかった。
おそらく伪名なのだろうが、女子の格闘家としてもあのビジュアルに记忆がない。
健士は男女问わず强敌のデータは把握している。
(それとも、俺の知らない强敌がまだこの世界にいるということなのか……)
相手を决して侮っているわけではなかった。
それでも自分は现在売出し中のキックボクサー界のチャンピオンだ。
普通に考えて负けるわけがない。
するとレフェリーの向こう侧から声が上がった。
「质问。私もそのルールに従わないとダメなのかしら」
「アンタは别に好きにすればいい。投げでも関节技でも使えばいい。これは男のプライドの问题だ」
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総合的な能力と照らし合わせて妥当な提案だと健士は考える。
相手のサリアは筋肉质とは言えないし、むしろ华奢な体と言えよう。
健士の拳がクリーンヒットすればガード越しでも骨が折れてしまう可能性だってあるのだから。
だがサリアは相変わらずつまらなそうに言叶を返す。
「ふ~ん……ずいぶん绅士なのね。どうでもいいけど」
「なにぃ!!」
「むしろ言い訳を作るのに丁度いいかも。
キックを使わないから僕は负けましたって言えば、十人に一人くらいはあなたに同情してくれるんじゃないの?」
プルンと揺れだしそうな胸を持ち上げるように両手を前で组んだままサリアは言う。
健士を见つめるその両目に怯えや虚势は感じられない。
むしろ口元には薄っすらと笑みを浮かべていた。
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「ふざけるなよ。俺はアンタのためにと思って提案したんだ!」
「别にふざけてないわ。感心してたの。
自分の负け理由をさり気なく取り缮うなんて、头いいなーって思っただけ」
もはやこれ以上対戦相手に情けをかける必要はないと彼は感じ始めていた。
「最后にもう一度いう。アンタは好きにすればいい。
キックでも投げでも使え。怪我だけはしてくれるなよ。俺からの最后の温情だ」
「ありがとう、强いキックボクサーさん。
じゃあ私からも提案。あなたも辛くなったら封印しているキックを使っていいわよ?」
その言叶を背に受けながら、健士は努めて冷静さを呼び起こす。
自分の中で热くなったプライドを冷まし、试合に専念する。
この1ラウンドで相手を倒して胜つ。
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